2012年 10月 07日
Thaungtoへ
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- ねえ、このあと晴れるかなあ? -
どんよりとした空を指しながらボートドライバーの青年に尋ねた。
私はきっと彼なら「よくなるんじゃないの?」みたいに適当に答えてくれると思ったし、嘘でもいいから、そういってほしかった。
でも、彼は難しい表情を浮かべたまま、最後まで首を縦に振らなかった。
私はボートをチャータして、インレー湖最南端にあるThaungto村の五日市を訪れることになっていた。
そこは9年前に訪問して以来になる。当時はこの伝統的な市場が水上市場でなく、地上で開かれたことにそれなりにがっかりして、あまり感動を味わうこともなかった。
でも、それから何年かしてあの時撮った写真を見るたび、ああ、自分はすごいところをたびしたんだなあ、という感慨深い思いを抱き、今回どうしても訪れたい場所のひとつにあげていたのだ。
カッパと傘はすでに用意していた。でも、できれば使わずにすませたい。
ニャウンシュエの運河で乗船し、南に向かってエンジン音を響かせながら走っていく。
出発してしばらくは、すれ違うボートの人たちの中に、傘をさす人もカッパをきている人もいなかった。
運河をぬけてインレー湖に入ると、南に黒く厚い雲が現れた。空を見るかぎり、雲はあきらかに南から北に向かっている。
やがて、すれ違うボートの中から、カッパをきている人の姿が目立ちはじめた。
黒い雲の下に入ると、待っていたかのように大粒の雨が降ってきた。
私はカメラをバッグの中にしまい、膝の上にのせたバッグが濡れないように傘をあてた。
おそらくThaungtoまでは1時間以上はかかるだろう。私はこの状態に耐えられるだろうか、市場は雨で活気を失っていないだろうか、村に着いたとき、もぬけの殻だったらどうしよう。
どんよりとした空に私たちの乗ったボートが包まれる中、私の心はそれ以上の不安に包まれた。
どのくらい経っただろうか、やがて傘を叩く雨音が小さくなった。空を見上げると、黒い雲はなくなっていた。
南のほうの空はやはり雲がかかっているものの、なんとなく明るくなっているように感じられた。
「ほら、南の空を見てみて。」
ボートドライバーの青年は、エンジン音に負けないくらいの声をはりあげ、南の空を指さしながら言った。
わずかながら青空が見えていた。
出発前、晴れてくれるよね、という私の問いに頷かなかった彼にとっても、まさか雨がやむとは思ってもみなかったのではないだろうか。
やがて、両側いっぱいに広がっていた湖は幅を狭め、両岸に水上家屋が並ぶエリアに入ってきた。ここまでくれば、Thaungtoもそれ程遠くはないだろう。
すれ違うボートや手漕ぎの小船に、薪や食材が積まれているのを見て、もうすぐそこだろうと思った。
そして、湿地帯の向こうの丘に、パゴダ群が見えてくると、私は振り返って
- Thaungto -
とやはりエンジン音に負けないくらいの声をあげながらボートドライバーに尋ねると、彼は大きく頷いた。
そうしてたどり着いたThaungto村。天気も悪くはない。
「ゆっくり見てきてください。」
そんなボートドライバーの言葉をよそに、はやる気持ちを抑えきれわい私は、小走りで市場に向かった。
どんよりとした空を指しながらボートドライバーの青年に尋ねた。
私はきっと彼なら「よくなるんじゃないの?」みたいに適当に答えてくれると思ったし、嘘でもいいから、そういってほしかった。
でも、彼は難しい表情を浮かべたまま、最後まで首を縦に振らなかった。
そこは9年前に訪問して以来になる。当時はこの伝統的な市場が水上市場でなく、地上で開かれたことにそれなりにがっかりして、あまり感動を味わうこともなかった。
でも、それから何年かしてあの時撮った写真を見るたび、ああ、自分はすごいところをたびしたんだなあ、という感慨深い思いを抱き、今回どうしても訪れたい場所のひとつにあげていたのだ。
カッパと傘はすでに用意していた。でも、できれば使わずにすませたい。
ニャウンシュエの運河で乗船し、南に向かってエンジン音を響かせながら走っていく。
出発してしばらくは、すれ違うボートの人たちの中に、傘をさす人もカッパをきている人もいなかった。
運河をぬけてインレー湖に入ると、南に黒く厚い雲が現れた。空を見るかぎり、雲はあきらかに南から北に向かっている。
やがて、すれ違うボートの中から、カッパをきている人の姿が目立ちはじめた。
黒い雲の下に入ると、待っていたかのように大粒の雨が降ってきた。
私はカメラをバッグの中にしまい、膝の上にのせたバッグが濡れないように傘をあてた。
おそらくThaungtoまでは1時間以上はかかるだろう。私はこの状態に耐えられるだろうか、市場は雨で活気を失っていないだろうか、村に着いたとき、もぬけの殻だったらどうしよう。
どんよりとした空に私たちの乗ったボートが包まれる中、私の心はそれ以上の不安に包まれた。
どのくらい経っただろうか、やがて傘を叩く雨音が小さくなった。空を見上げると、黒い雲はなくなっていた。
南のほうの空はやはり雲がかかっているものの、なんとなく明るくなっているように感じられた。
ボートドライバーの青年は、エンジン音に負けないくらいの声をはりあげ、南の空を指さしながら言った。
わずかながら青空が見えていた。
出発前、晴れてくれるよね、という私の問いに頷かなかった彼にとっても、まさか雨がやむとは思ってもみなかったのではないだろうか。
すれ違うボートや手漕ぎの小船に、薪や食材が積まれているのを見て、もうすぐそこだろうと思った。
- Thaungto -
とやはりエンジン音に負けないくらいの声をあげながらボートドライバーに尋ねると、彼は大きく頷いた。
「ゆっくり見てきてください。」
そんなボートドライバーの言葉をよそに、はやる気持ちを抑えきれわい私は、小走りで市場に向かった。
by asiax
| 2012-10-07 17:13
| ミャンマー(ビルマ)