2006年 04月 30日
サイゴンの朝
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ベトナム、サイゴンにきて2日目の朝6時過ぎ、宿の受付で寝ているスタッフに起きてもらい入り口を開けてもらう。市場の喧騒にまぎれ、細い路地を通り抜け、地図をあてにすることなく人の流れをみながら歩いていた。群れるバイクの排気ガスで灰色によどんだモノクロの町中をアオザイ姿の女子学生が通りすぎる。
とにかく腹が減っていた。道端にはあちこちにおいしそうな屋台がでていて、現地の人々が食事をとっていた。そのことがますます空腹感を増幅させた。それでもぼられることが心配でどうしても席につけなかった。
ファングーラオ通りとチャンフンダオ通りが交差する近くに3角形のアンティークビルが時代の流れに逆らうように建ちすくんでいた。壁の隙間から木が生え、あらわになった根が壁をつたう。私はこのビルにしばしの間溶け込んでいたかった。
そのビルの下でガラスケースにおかずを並べ、炭火で豚肉を焼いている店があった。私はそこに近づき、せわしなく働く女主人にいくらですか?と尋ねるが、私にかまう暇もなく「何が食べたいの?」と言った感じで聞き返され、私は値段も分からないまま2品を指差し席についてしまった。そばの飲み物屋台のおばさんが「1,000ドン。」と言って差し出した冷茶を受け取ってしまった。
私は食事をとりながら食べおえた人がいくら払っているのか凝視していた。10,000ドンもしないようだ。食べおえた私は女主人に10,000ドン、飲み物屋のおばさんに1,000ドンを渡した。忙しそうにおつりの紙幣を探す女主人に飲み物屋のおばさんは、「この人分かってないからもらっちゃおうよ。」みたいなことを耳打ちしていた。しかし、その女主人は私が払った1,000ドンをひったくり、2,000ドンのお釣りと一緒に返し、女主人はおばさんに1,000ドンを払ったのだ。その表情は商売人としてのプライドにあふれていた。
私は本やガイドブックを読んで、ベトナム人はみんなぼるのだと思い込んでいた。そんなおろかな自分を申し訳なく思った。日本にも悪い人がいれば良い人もいるように、ベトナムにも悪い人がいれば良い人もいるのだ。そんな当たり前のことをベトナムに来てやっと気づいた。
きてよかった、そう実感した。
by asiax
| 2006-04-30 14:16
| ベトナム