2007年 04月 26日
カントー行きバス~少年の微笑み編~
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カントー行きのバスが先のない行き止まりのようなところにさしかかり、いくつもの車が並ぶ後ろで停止した。
メコン川後江にたどり着いたのだ。ここからはフェリーに乗って行くことになるはずだ。停車したバスにどっと物売りが車内にそして窓の外からも押し寄せる。
食べ物、飲み物、新聞、サングラス、宝くじ。こんな瞬間が私は好きだ。
英語で話しかけてくる男が窓の外から私に声をかけてきた。どこから来たのか、カントーではどこに泊まるのか、何日滞在するのか。
ローカルバスでの移動中、ベトナム語に翻弄され続けた中で、私は不信感を抱くことなく、彼の言葉に一つ一つ答えていた。
「僕がここからバイクであなたの宿まで送るよ。」
その言葉で、ハッとした。私の表情が曇ったのを見越してか、彼はバスに乗り込み、私のカバンを持って降りてしまった。
-ちょっと待ってよ、いくらなの?-
「私たちはフレンドだ、お金なんていいよ。」
その言葉が益々私を不安にさせた。彼は私のカバンを両膝で抱え込み、私はバスを降りて彼の後ろに乗るしかなかった。
彼はバイクの並ぶ列を無視してフェリー乗り場の最前列に向かい、警備の人ともめはじめた。
-もういいよ。やっぱりバスでいくよ。-
というと、
「あなたの乗ったバスはカントーへはいかない。」
という明らかな嘘をついたとき、私の不安は最高潮に達した。
-とにかくちゃんと並ぼうよ-
という私の言葉で、私たちのバイクは私が乗車していたバスの更に後方に戻ってしまった。そして私は彼が両膝で抱えている私のバッグを強引に奪い取り、猛ダッシュでバスへと戻っていった。
空いていた席についてほっと胸をなでおろす私を、前の座席に座っている少年がやさしい目で眺めていた。
なんて落ち着きはらった表情なのだろう。それは少年のはにかんだ笑顔でなく、仏のような微笑みだった。
一方、まだ動揺を隠せず苦笑いを浮かべる私。どちらが大人でどちらが子供か分からない表情で私たちは見つめあった。
やがてバスはフェリーに乗船し、不安と恐怖のボーダーラインを通りすぎた。私はやっと正気を取り戻し、今回楽しみにしていたメコンの川渡りをしばしの間楽しんだ。
西側に傾きはじめた太陽が、メコンを光り輝かせた。
おもしろいたびになりそうだな。そんな気がした。
食べ物、飲み物、新聞、サングラス、宝くじ。こんな瞬間が私は好きだ。
英語で話しかけてくる男が窓の外から私に声をかけてきた。どこから来たのか、カントーではどこに泊まるのか、何日滞在するのか。
ローカルバスでの移動中、ベトナム語に翻弄され続けた中で、私は不信感を抱くことなく、彼の言葉に一つ一つ答えていた。
「僕がここからバイクであなたの宿まで送るよ。」
その言葉で、ハッとした。私の表情が曇ったのを見越してか、彼はバスに乗り込み、私のカバンを持って降りてしまった。
-ちょっと待ってよ、いくらなの?-
「私たちはフレンドだ、お金なんていいよ。」
その言葉が益々私を不安にさせた。彼は私のカバンを両膝で抱え込み、私はバスを降りて彼の後ろに乗るしかなかった。
彼はバイクの並ぶ列を無視してフェリー乗り場の最前列に向かい、警備の人ともめはじめた。
-もういいよ。やっぱりバスでいくよ。-
というと、
「あなたの乗ったバスはカントーへはいかない。」
という明らかな嘘をついたとき、私の不安は最高潮に達した。
-とにかくちゃんと並ぼうよ-
という私の言葉で、私たちのバイクは私が乗車していたバスの更に後方に戻ってしまった。そして私は彼が両膝で抱えている私のバッグを強引に奪い取り、猛ダッシュでバスへと戻っていった。
空いていた席についてほっと胸をなでおろす私を、前の座席に座っている少年がやさしい目で眺めていた。
なんて落ち着きはらった表情なのだろう。それは少年のはにかんだ笑顔でなく、仏のような微笑みだった。
一方、まだ動揺を隠せず苦笑いを浮かべる私。どちらが大人でどちらが子供か分からない表情で私たちは見つめあった。
西側に傾きはじめた太陽が、メコンを光り輝かせた。
おもしろいたびになりそうだな。そんな気がした。
by asiax
| 2007-04-26 22:07
| ベトナム